『まんぷくかえると離れていくトマト』

「 よいしょ、よいしょ 」
今日も元気な声が聞こえてきました。

大きなトマトがたくさん採れたね!
ツヤツヤしていておいしそう。
おうちに帰ったらどうやって食べようかな?


これは大物だから、ちょっと休憩♪
かえるが目を離した隙に、後ろのひと粒が勢いよく坂道を転がっていきました。

ポチャン!!!

大ショックです!
かえるは坂道を駆け下りました。

「待って!行かないで!!!」

ですが、ぷかぷかと浮いたトマトは、
水面から覗く、丸い 何かにすっぽりはまって
あっという間に池の真ん中の方へ行ってしまいました。

「 もぐもぐさん! ボートを貸しておくれ 」

あまりに慌てたかえるに、もぐもぐさんは驚きながらも
もちろん、返事はOK

ボートで急いで追いかけます!

もぐもぐさんは力持ち。
大きく漕いで、スイスイと前へ進みます。

見失う前に追いつかなきゃ!

あれから、どのくらいの時間が経ったでしょうか。
一生懸命に追いかけましたが、トマトを背負った生き物は、
泳ぐのが早かったようで、
とうとう見失ってしまいました。

ふたりは波の音を静かに聞いています・・・。

その頃・・・。

「 あれ?? 」

かえるがひと休みしていた場所へ戻ると、
何故か他のトマトもどこかへ消えてしまっていました。

やりきれない思いでいっぱいのかえる。
悲しさと悔しさで、お腹が空いた帰り道。

ぽてまるがお留守番をしているんだから、
ほら、泣かないで。

「 ぽてまる、ただいま 」

かえるはびっくりしました。
でも、机の下に落ちていたヘタのおかげで
すぐに全てを理解しました。

消えたトマトの行方は、ぽてまるのお腹の中だったのです。

「 美味しかったね 」

ぽてまるの口についたトマトが
なんだか可笑しくって、
さっきまで悲しかったことが癒されるように
ほろり、涙があふれたのでした。

おしまい。

『まんぷくかえると離れていくトマト』